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海に囲まれる日本の強みとなるか、ブルーカーボンクレジットとは

近年、地球温暖化対策の一環として注目され始めているのが、ブルーカーボンです。ブルーカーボンを活用したカーボンオフセットの一種に、ブルーカーボンクレジットがあります。本記事では、ブルーカーボンクレジットとは何か、その仕組みや潜在的可能性について詳しく解説していきます。

ブルーカーボンとは

ブルーカーボンとグリーンカーボン

ブルーカーボンとは、海洋や湖沼、河川などの水域に存在する炭素のことを指します。植物や海藻などの生物が二酸化炭素を吸収し、その炭素が水中に沈殿して形成されるもので、海底の泥や砂、岩などの地層の中に蓄積しています。大気中の二酸化炭素濃度を減らす効果が期待されており、気候変動の影響を軽減するために注目されている炭素の一種です。また、海岸線の保全や生態系の維持にも関係しています。

具体的な例としては、マングローブ林や海草場、サンゴ礁などが挙げられます。これらの生態系は、大量の炭素を蓄積することができるため、ブルーカーボンの保全に重要な役割を果たしています。

一方で、グリーンカーボンとは、植物が大気中から二酸化炭素を吸収して作り出す有機物質のことです。ブルーカーボンより一般的に地球温暖化対策として活用されているので、イメージがつきやすいかと思います。グリーンカーボンもブルーカーボンと同じく、大気中の二酸化炭素削減のためのカーボンオフセット手段としても利用されており、グリーンカーボンクレジットの発行や取引が行われています。

ブルーカーボンが注目される理由

ブルーカーボンは他のカーボンオフセット手段と比べて比較的新しく、市場も小さいため、近年注目されてきており、需要も増加傾向にあります。また、ブルーカーボンの保全は、炭素削減のみならず、海洋生態系の健全性維持、生物多様性の保護に繋がり、漁業や観光などの海洋産業の持続可能性も高めることができます。

ブルーカーボンクレジットの仕組み

ブルーカーボンをどうやってクレジット化するのか

①ブルーカーボンの計測
クレジット化のためには、まず海洋生態系内の炭素量を正確に計測する必要があります。これには、沿岸や湿地帯などの海洋生態系の測定、評価、およびモニタリングが必要です。

②ブルーカーボンの削減量の評価
ブルーカーボンクレジットの発行には、削減量の評価が必要です。これには、海洋生態系におけるある時点での炭素量と比較して、ブルーカーボンの削減量を計算する必要があります。

③証明書の発行
次にブルーカーボンの削減量を証明する証明書が必要です。この証明書は、ブルーカーボンクレジット取引所や第三者機関によって発行されます。

④ブルーカーボンクレジットの取引
ブルーカーボンクレジットは、クレジット取引所を通じて売買されます。クレジット取引所は、ブルーカーボンクレジットを購入したい人と、発行したい人を結びつけるマーケットプレイスです。

これらの手順を経て、ブルーカーボンクレジットを発行し、取引することができます。ただし、ブルーカーボンの測定や証明には正確な計測と削減量の評価が必要なため、高度な技術と専門知識をもとに適切な計測を行う必要があります。

どんなプロジェクトが日本にあるのか

日本で行われている代表的なブルーカーボンプロジェクトとして、伊豆大島のサンゴ礁再生プロジェクトを紹介します。伊豆大島周辺のサンゴ礁は、長年にわたる海水温上昇や赤潮、アユの過剰捕獲などにより大きなダメージを受けており、保全が急務とされています。

プロジェクトでは、サンゴの種子を海中に散布することで、新たなサンゴ礁を形成する取り組みが行われています。再生されたサンゴ礁がCO2を吸収することにより、ブルーカーボンクレジットを発行する取り組みです。このプロジェクトでは、再生されたサンゴ礁の保全・観察が継続的に行われることで、ブルーカーボンクレジットの有効期限が延長されます。

また、地元の漁業者や島民からも支持を受けており、伊豆大島の豊かな自然環境を守るためにも、今後も取り組みが続けられていく予定です。

他にも日本国内ではさまざまな取り組みがなされており、今後もさらに多くのブルーカーボンプロジェクトが実施されることが期待されています。

世界最先端のブルーカーボンプロジェクト

世界中で多くのブルーカーボンプロジェクトが進行していますが、特に注目を集めているブルーカーボンプロジェクトの一つとして挙げられるのが、オーストラリアのグレートバリアリーフにおけるプロジェクトです。

グレートバリアリーフは世界最大級のサンゴ礁であり、豊かな生態系を持つ海洋保護区でありながら、気候変動による海水温上昇や海洋酸性化などの影響により、その生態系は大きな危機にさらされています。このプロジェクトでは、海藻や海草、サンゴなどの海洋植物を増やすことによって、二酸化炭素を吸収し、炭素の貯蔵と排出量の削減を促進することを目的としています。具体的には、グレートバリアリーフ周辺の水域で、カーペットウィードと呼ばれる海草を大量に育てることによって、炭素の貯蔵量を増やす取り組みを進めています。このカーペットウィードは、海洋生物のエサや保護区域の形成にも役立つことが期待されています。

ブルーカーボンクレジットマーケットの最新状況

ブルーカーボンのマーケット規模と期待

ブルーカーボンクレジットの市場規模はまだ小さいとされていますが、今後の拡大が期待されています。具体的な数字としては、2021年時点でのブルーカーボンクレジット市場の規模は10億ドル程度とされていますが、2025年には100億ドル以上に成長すると予測されています。(世界銀行レポート「カーボンプライシングの現状と傾向 2022年」5月24日発表 より)

また、ブルーカーボンに対する期待は非常に高く、これまでにも多くの国や企業がブルーカーボンプロジェクトに投資を行っています。特に欧州連合(EU)や米国、日本などが研究や投資を進めており、今後、ブルーカーボンクレジット市場の拡大による地球温暖化防止への貢献が期待されています。

さらに、ブルーカーボンクレジットが認知度を高め、需要が拡大することによって、海洋環境の保全や地域社会の経済的発展にもつながることが期待されています。

最近の取引価格と購入方法


ブルーカーボンクレジットの取引価格は、プロジェクトの種類や規模、場所などによって異なります。また、ブルーカーボンクレジット市場自体がまだ発展途上であり、様々な要因によって影響を受けるため、価格が安定しているわけではありません。

しかしながら、2021年に入ってからは、ブルーカーボンクレジットの取引価格が上昇傾向にあるとされています。例えば、2021年3月には、オーストラリアのブルーカーボンプロジェクトにおける取引価格が、2020年時点から約25%上昇し、1トンあたり24.40オーストラリアドル(約1900円)に達したと報じられています。

ブルーカーボンクレジットを購入するには、まず各国の政府や独立機関、民間企業などの発行元や、国際的な市場の取引所を探す必要があります。次に、取引所に登録して取引口座を開設し、クレジットの価格や量、支払い方法などを決めて購入することができます。購入したクレジットは、企業が環境負荷を減らすことができなかった場合や、二酸化炭素排出量の規制に違反した場合などに使用され、カーボンオフセットに役立てられます。

ブルーカーボンクレジットを購入する場合は、信頼できる販売元や取引所を選ぶこと、また、そのクレジットが本当に有効なものであるか、どのようなプロジェクトで削減されたものかなど、詳細な情報を確認することが重要です。

ブルーカーボンのポテンシャルと便益

日本にとっての潜在的可能性

日本は、周囲を海に囲まれた島国であり、海洋による炭素吸収の潜在能力が高い国の一つです。例えば、日本には広大な干潟が存在しており、海草や塩性植物が多く生息しています。干潟に蓄積される有機物や二酸化炭素は、波や潮の力で海に流れ出し、貯留されることになります。干潟は炭素の貯蔵場所として機能するとともに、炭素循環においても重要な役割を果たしているのです。

さらに、日本は海洋環境保護に対する意識が高く、多くの海洋保護プロジェクトが進められています。これらのプロジェクトにおいて、ブルーカーボンの取り組みを積極的に取り入れることで、炭素の貯蔵や排出量の削減に貢献することが期待されています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

本記事では、ブルーカーボンクレジットとは何か、その仕組みや潜在的可能性について詳しく解説してきました。

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