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マングローブ再生が地球を救う?!インドネシアの最前線から【前編】

こんにちは、Linkholaでインターンをさせていただいている大学3年の吉川です。
このたび、2023年9月4日から14日の約10日間、インドネシアのPekalonganにてマングローブ植林によるボランティア活動に参加してきました。現地でマングローブ植林を実施している方の家族の家にステイさせていただくことができたため、食や文化をはじめとして現地の生活に浸ることができました。温かく受け入れていただいたホストファミリーのみなさまには、改めて感謝したいです。
今回の活動を通して、マングローブの再生が、カーボンニュートラル達成に大きく貢献できる可能性があると感じました。その可能性や重要性を、ぜひみなさんにも知ってもらいたく、ブログに記したいと思います。

目次

1.参加のきっかけ
2.そもそもマングローブって何?
3.マングローブの何がすごいの?
 ①大量の二酸化炭素を吸収・貯蔵し、地球温暖化防止に貢献する。
 ②生物多様性や漁業資源の保全に貢献し、生命のゆりかごとして機能する。
 ③高潮による侵食被害や津波による被害を大幅に軽減できる。
4.マングローブの現状
→【後編 目次5.-7.につづく】

参加のきっかけ

さて、今回の活動について書く前に、そもそも参加しようと思ったきっかけについて簡単に触れておきます。それは自身の夢として、「持続可能な世界の実現に、環境技術の開発や実装によって貢献する」というのがあったからです。環境保全活動に取り組みつつも、環境インフラの不足や水質汚染などの課題を抱える地域に、実際に足を運ぶことができる良い機会だと思い、参加を決めました。

そもそもマングローブって何?

「マングローブ」という言葉を聞いたことがある人は多いと思いますが、マングローブとは固有の植物の名称ではなく、亜熱帯や熱帯地域の海水と淡水が混ざり合う湿地帯に生育する植物群の総称です。世界には100種類以上のマングローブがあると言われています。
特徴としてわかりやすいのは、その根が特異的な形状をしていることが多いことです。次のような写真を見たことがある人も多いのではないでしょうか。

舟で近くの海辺まで行った際に撮影。通称Bakau。よく見るとわかるように、マングローブの下部にはタコの足のようなものが伸びているのがわかります。これは支柱根と呼ばれる根の種類です。

通称Pidada。画像下半分に見えるトゲトゲしたものは、実は全て通気根と呼ばれる根の種類です。(出典:SCHOOL MEDIA News

もちろん根がこのような形状をしているのには理由があります。それは、生育域の土壌は酸素が不足しやすく、さらに満潮時にはマングローブの下部は冠水してしまい酸素を供給できなくなるからです。地上に根を張り出すことで過酷な環境下でも呼吸することができます。また、汽水域に生育するマングローブはしばしば海の波の影響を受けますが、その影響から樹木自体を守る働きもあります。

マングローブの何がすごいの?

今回のマングローブ植林ボランティアに限らず、世界全体で見てもマングローブ植林活動が盛んに行われていますが、それはマングローブには他の植生にはない以下のような固有のメリットがあるからです。
①大量の二酸化炭素を吸収・貯留し、脱炭素・地球温暖化防止に貢献する。
②生物多様性や漁業資源の保全に貢献し、生命のゆりかごとして機能する。
③高潮による侵食被害や津波による被害を大幅に軽減できる。
では、順番に説明していきます。

①大量の二酸化炭素を吸収・貯留し、脱炭素・地球温暖化防止に貢献する。
やはり近年最も注目されているマングローブの有益な役割がこれになるでしょう。多くの人が熱帯雨林が二酸化炭素を吸収する役割を担っていることを知っていると思います。しかし実は、一般的な熱帯雨林が1ha当たり年間せいぜい20t程度の二酸化炭素しか吸収できないのに対し、マングローブ林は種類にも依りますが、1ha当たり年間25t~44tもの二酸化炭素を吸収することができると言われています。(中西
こればかりではありません。森林は一般的にその樹木自体と、生育する土壌にも大量の炭素を貯留していますが、マングローブの炭素貯留量は他の森林のそれに比べて圧倒的に多いと言われているのです。次に示すのは、それをわかりやすく示したグラフです。

植生ごとの炭素貯留量の比較(出典:国際マングローブ生態系協会、原典:Donato et. al.2011)

マングローブは他の森林と比べて、4倍程度の炭素をその地下に貯留できていることがわかります。そしてこのマングローブの炭素貯留量を二酸化炭素量に換算すると約3000tになり、日本人300人が1年間に排出する二酸化炭素量に匹敵するのです。(日本の年間二酸化炭素排出量を人口で割った値を10tとして計算)このようにマングローブは、脱炭素を達成するに当たり、非常に大きな役割を持っていることがわかります。
なぜこれだけの量の炭素を貯留できるのか。それは次の②の内容と関わってるのでそちらで説明します。

②生物多様性や漁業資源の保全に貢献し、生命のゆりかごとして機能する。
マングローブは先ほどの写真のように、その根が非常に込み入った形状をしています。このおかげで根同士の隙間は波が穏やかになり、生物が天敵から身を潜めることができるため、たくさんの小魚とその餌となる動物プランクトン、貝類やカニとそれらを食べる野鳥など多種多様な生物が生息しています。そして、マングローブの落ち葉や種子、多様な生物の死骸が土壌に堆積し、それらを食べる生物も集まってくるのです。このように豊かな生態系が生まれることで、漁業資源は一層豊かになり、現地の人の生活を支えることに繋がります。
ところで、この落ち葉や生物の死骸などの有機物は、通常酸素に触れることによって微生物によって分解されます。しかし、マングローブ林ではその根付近が汽水に満たされて酸素が不足するため、有機物は分解されにくく土壌に堆積し続けます。
有機物は分解されると一般に二酸化炭素を排出しますが、マングローブ林の土壌では、有機物が分解されにくく堆積し続けることにより、その土壌中に通常の森林の何倍もの炭素を貯留することが可能になるのです

③高潮による侵食被害や津波による被害を大幅に軽減できる。
2004年12月27日、スマトラ沖地震による津波によって、インドネシアにも甚大な被害が出ました。しかし、沿岸にマングローブ林が発達していた地域では、津波の被害が小さく済んだという報告があります。逆に開発等によってマングローブ林を伐採していた地域では相対的に被害が大きかったそうです。
これは、マングローブ特有の込み入った根の間を波が通過することによって、波のエネルギーを急激に減衰させることができるからです。始めに写真で示したタコの足のような根(支柱根)を持つマングローブは、特に減衰効果が大きいうえ、樹高を超える津波に襲われても倒木することなく強い抵抗力を示した、という調査結果もあります。(林 ほか 2005)
マングローブ林は、津波を減衰させることができるくらい強力なので、強風や高波の被害を大幅に軽減することができます。実は僕が滞在していたジャワ島北岸地域は、強風や高波による海岸侵食を受けて水没し、移住を余儀なくなれてしまった地域がありました。

高波等による海岸侵食により、水没してしまった家

このような被害を防ぎ、人々の生活を守るためにも、マングローブ林を保全、植林することが重要なのです。

マングローブの現状

このようにメリットがたくさんあるマングローブ林ですが、1980年~2005年の間に世界全体の約20%のマングローブ林が失われました。
憂慮すべきは、世界一のマングローブ面積(世界の約20%)を誇るインドネシアにおいても、同期間に30%以上のマングローブが失われたことです。その多くは、集約的な養殖地の開発、薪炭材生産のための伐採、過度なリゾート地の開発によるものです。(田村 2016)
ここ10年においては、マングローブ保全・植林活動が盛んに行われ、地域によっては回復傾向が見られますが、それでも世界全体で見ると年間1%ずつ減少していると言われています。
多様な生命のゆりかごとなり、地球温暖化の抑止にも貢献するマングローブの更なる減少を食い止め、保全・植林していくことは、この地球に住む私たち全員の共通の責任であると言えます。

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