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カーボンバジェットとは?CO2排出量の限界について解説

皆さんは「カーボンバジェット」という単語を知っていますか?本記事では、カーボンバジェットについて詳しく解説し、私たちに残されたカーボンバジェットがいかに少ないのか、またそれを超えないために私たちができることについて考えてみたいと思います。

カーボンバジェットとは?

カーボンバジェットという言葉を知ってますか?
カーボンバジェットとは、地球温暖化のある温度上昇限度目標に対して、その目標を達成するために許容される温室効果ガスの総排出量を示す指標です。つまり、カーボンバジェットとは地球温暖化を抑制するために人類が将来的に排出可能な温室効果ガスの量を定量化したものとなります。この概念は、気候科学や環境政策において広く使われています。そして国際的な温室効果ガス削減目標の策定や、企業や国家の温室効果ガス削減戦略の立案などに役立てられています。

カーボンバジェットは温度上昇限度目標とその目標を達成する確率の2つを定めることで、気候モデルに基づいて計算が可能となります。そのためカーボンバジェットの数値はあくまで目安であり、気候モデルの精度や温度上昇限度目標、確率の設定によって変化します。

1.5℃シナリオについて

1.5℃シナリオとは?

温度上昇限度目標とは具体的に何℃とされているのでしょうか。その1つの目安が1.5℃です。そして、それに関わる1.5℃シナリオというものが存在します。
1.5℃シナリオとは地球温暖化を1.5℃に抑えるための目標を達成するためのシナリオです。 1.5℃シナリオはIPCC第5次評価報告書で初めて言及され、パリ協定の締結後、2018年には「1.5℃特別報告書」が発表されました。

1.5℃シナリオの達成には、2050年までにカーボンニュートラルを達成する必要があり、具体的にはエネルギー生産、交通、建築、土地利用などの分野で大規模な技術的革新、社会的変革を起こさなければならないとされています。

1.5℃シナリオが達成されなかった場合

気候への影響
IPCCによると、人類が気候変動を進めなければ10年に1回発生するような極端な猛暑が、1.5℃上昇の場合は4回、2℃上昇の場合は5〜6回に増える恐れがあるとされています。
また、平均気温が上昇すれば海や地面から蒸発する水の量も増えるため、大気中の水分量が増加し、豪雨が発生する頻度も多くなります。

海洋、氷、サンゴ礁への影響
気温上昇を1.5℃に抑えることができれば、グリーンランドと南極地方西部の氷床の大半を崩壊から防ぐことができます。これが実現されれば、21世紀末までの海面上昇をわずか30cm程度に抑えることが可能です。ただ、これでも海岸線の後退によって水没してしまう国や都市が出てくる可能性はあります。しかし、気温上昇が2℃を突破すれば、海面上昇が10mを超える可能性が生まれてしまうのです。
また、気温が1.5℃上昇した場合、サンゴ礁は少なくとも全体の70%以上が消失されると予測されていますが、これが2℃上昇となった場合99%以上が消失するとされています。サンゴは大気、海水のCO2を吸収、固定してくれる大切な役割をもっているため、消失スピードを食い止めなければなりません。

このままではカーボンバジェット超過の恐れ?

世界中で温暖化対策が進んでいますが、それでもカーボンバジェットの残量には限界が近づいています。
地球温暖化を1.5℃に抑える可能性を50%とした場合のカーボンバジェットの残りは380GtCO2、2℃に抑える場合は1230GtCO2です。2022年のCO2排出量のままでは1.5℃目標に関しては9年で超過、2℃目標に関しては30年で超過してしまう恐れがあります。

待ったなし、2030年が未来を左右するタイムリミット

 世界の排出量の早期ピークアウト

カーボンバジェットを使い果たさないためには、CO2排出量を計画的に減少させる必要があります。その際に大切なのがCO2排出量の「ピークアウト」です。
「ピークアウト」とはCO2排出量がある特定の期間内に最高点に達したあと、減少に転じることを指します。2015年のパリ協定では、世界的に排出量を可能な限り早期にピークアウトさせ、その後急速な排出量削減に向けた努力を行うことが目標とされています。

2030年までに世界はCO2排出量を半分に(カーボンハーフ)

パリ協定での目標である「気温上昇を2℃未満に抑え、可能な限り1.5℃以下に抑えること」を達成するために、世界は2050年にカーボンニュートラルを達成しようとしています。
ここで出てきたカーボンニュートラルというのは、CO2排出量をゼロにすることを意味しています。しかし、それを達成するためにはまずCO2排出量を現在の半分にしなければいけません。CO2排出量を半分にすることをカーボンハーフと言います。2050年カーボンニュートラルを達成するためには、カーボンハーフを2030年までに達成しなければならないとされています。つまり、2023年現在残された時間はほんのわずかとなっているのです。

排出量ギャップとは

パリ協定では参加各国が自主的な削減目標を提出することになっています。この削減目標が実現した時の総排出量と、1.5℃目標や2℃目標を達成するために必要な排出量との差のことを、「排出量ギャップ」と言います。この「排出量ギャップ」が示す問題というのは、つまり、各国が設定している目標だけでは、地球温暖化を抑えるために必要な削減量には達しないことを意味します。
国際エネルギー機関によると、各国の削減目標の合計は、2030年までに必要な削減量の半分以下にとどまっており、各国がより野心的な目標を設定し、実行することが求められています。

残されたカーボンバジェットを目減りさせない

私たちは、「宇宙船地球号」として、地球温暖化を抑制する喫緊の課題として、残された「カーボンバジェット」を消費しないようにすることが重要です。そのために企業は再生可能エネルギーの導入、エネルギー効率の向上、持続可能な製品の提供を通してなるべくCO2排出量を減少させる必要があります。
しかし、国家や大企業だけの削減努力には限界があります。地球環境を守るためには、中小企業、個人も、みんなで「自分ごと」として、同様に環境への意識を高め、具体的な行動をしていきしょう。

まとめ

カーボンバジェットとは、地球温暖化の温度上昇目標を考えた際にこれから排出可能な二酸化炭素の排出量を示したものです。世界が今の速度で二酸化炭素を排出した場合、カーボンバジェットはすぐに底をついてしまいます。これを目減りさせることのないように私たちも日々の生活の中で環境を意識した行動をするようにしましょう。

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