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今話題のカーボンニュートラル燃料とは?種類や活用方法について解説

人工的な原油とも呼ばれるカーボンニュートラル燃料は、脱炭素社会の実現に向けて開発が進んでいる合成燃料です。

世界的に取り組まれている「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、現在注目を集めています。

そんなカーボンニュートラル燃料ですが、この記事をご覧の方には、

「カーボンニュートラル燃料ってどんな概念なの?」
「なぜ注目されてるの?どんなメリットやデメリットがあるの?」
「カーボンニュートラル燃料はどのように使われるの?」

といった疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、カーボンニュートラル燃料のメリットやデメリット、種類や活用方法について詳しく解説した上で、カーボンニュートラル燃料の今後について触れていきます。

ひと通り読んでいただければ、カーボンニュートラル燃料について関心を持つ企業の皆さまが知っておくべきことがすべてわかり、より脱炭素社会へ向けた世界の動きを理解することができます。

また、企業として取り組むことができることも見えてくるかと思いますので、ぜひ最後まで読んでくださいね。
それではまいります。

カーボンニュートラル燃料とは?

カーボンニュートラル燃料とは

冒頭でもお伝えしましたが、カーボンニュートラル燃料とは合成燃料と呼ばれる燃料のことで、CO2(二酸化炭素)とH2(水素)を合成してつくられます。

いったいなぜこの合成燃料がカーボンニュートラルなのかというと、原料となるCO2はリサイクル、H2は再生可能エネルギーの利用を想定したものだからです。

CO2を資源として利用する「カーボンリサイクル」と「DAC技術」

本来、エネルギーを生み出す過程で排出されるのがCO2です。
しかしこのCO2を再利用することで、逆にエネルギーの生産に役立てることをカーボンリサイクルといいます。

カーボンニュートラル燃料の製造に利用されるCO2は、発電所や工場などから排出されるCO2を利用します。
つまり、排出ガスをリサイクルしているというわけですね。

そしてなんと、大気中のCO2を直接分離し回収することができる技術もあって、この技術はDAC技術(Direct Air Capture)と呼ばれています。

将来的には、このDAC技術を使って大気中のCO2を減らしつつ、燃料を生み出すことを目標にしており、カーボンニュートラル実現の鍵を握る存在とも言われています。

再生可能エネルギーを用いたH2の利用とe-fuel

再生可能エネルギーを利用することで、製造過程でCO2を排出せずに電力エネルギーを生み出すことができます。
その電力エネルギーを利用し水分解をすることで、水からH2をつくりだすことができる、というわけです。

このように、再生可能エネルギーからつくられたH2を原料にした合成燃料をe-fuel(イーフューエル)と呼びます。

もともとH2はどのようにつくられているかというと、石油や石炭などの化石燃料からつくられるわけです。
しかし、この方法でつくられたH2をカーボンニュートラル燃料の製造につかうと、燃料の製造過程で新たなCO2が排出されてしまうため、効率が悪くなってしまいます。

カーボンニュートラル燃料はあくまで燃料である以上、燃焼時にはCO2が発生します。
合成燃料の製造過程で回収したCO2と、燃焼時に排出されるCO2が相殺されるからカーボニュートラルになるわけです。

そのため、カーボンニュートラル燃料の製造につかわれるH2は再生可能エネルギー由来であることが基本となるわけですね。

カーボンニュートラル燃料が注目される理由

2050年カーボンニュートラル

カーボンニュートラル燃料が注目される理由は、日本や世界の政策が大きく関係しています。

2020年10月、日本政府は「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表しました。
その内容は、2050年までに脱炭素社会を実現し、温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目標としています。

国際的にも、脱炭素化に向け大きく動きが見られる中、日本は温暖化へ積極的に対応する企業を後押しするために、産業政策「グリーン成長戦略」を策定しました。

そのグリーン成長戦力のひとつに位置づけられているのが合成燃料の開発、つまりカーボンニュートラル燃料というわけです。

カーボンニュートラル燃料は、原油と比べて硫黄分や重金属分が少ないという特徴もあるため、燃焼時の不純物排出が抑えられエコ製造・クリーン燃焼な人工的原油として注目を集めています。

カーボンニュートラル燃料のメリットとデメリット

カーボンニュートラル燃料のメリットは、前項でお話したものと合わせて以下の4つがあげられます。

1.発電所や工場から排出されたCO2を再利用できる
2.原料のH2を作るときにCO2を排出しない
3.燃焼時に不純物の排出が少なくクリーンである
4.既存の設備がそのまま利用できる

既存の設備がそのまま利用できるという特徴についてはここで初めて触れますね

カーボンニュートラル燃料は既存の設備がそのまま利用できる

たとえば環境に配慮されたエネルギーとして、電気や水素の利用があげられます。
身近なもので例えると電気自動車です。

電気を使うことで排出ガスの問題を解決することはできますが、電気を利用したエネルギーで車を動かすには電気自動車という新しい設備が必要になりますよね。

その点、カーボンニュートラル燃料は気体や液体の合成燃料として製造され、既存の都市ガス設備やエンジン車にそのまま利用することが可能です。

エコ製造・クリーン燃焼に加えて既存インフラをそのまま活用できるのが、カーボンニュートラル燃料の大きなメリットと言えます。

一方で、カーボンニュートラル燃料にはデメリットもあり、それが今後の課題とも言うことができるでしょう。

カーボンニュートラル燃料のデメリットと課題

デメリットとしてあげられるのは以下の2つが代表的です。

1.製造技術が確立されておらず実用化に至っていない
2.製造コストが高い

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.製造技術が確立されておらず実用化に至っていない

ひとつめのデメリットは、日本においてはカーボンニュートラル燃料の研究は進んでいるものの、まだまだ実用化には至っていません。

カーボンニュートラル燃料はエンジン車などにも利用できる合成燃料ですが、大規模かつ連続した製造技術や設備はありません。

つまり、この製造プロセスをいかに効率化し、カーボンニュートラル燃料を商用化できるかが課題ということになります。

2.製造コストが高い

ふたつめのデメリットは、製造コストが高い点です。

特に日本では低コスト製造が実現されておらず、国内でカーボンニュートラル燃料を製造するよりも海外で製造した方が安いのが現状です。

特にH2の国内製造はコストが高く、国内でカーボンニュートラル燃料を製造する場合、国内のH2を活用すると、海外のH2を輸入する場合と比べてコストが約2倍となってしまうという試算です。

日本がカーボンニュートラル分野で成長するには、カーボンニュートラル燃料の製造コスト削減、特にH2の製造コスト削減が大きな課題と言うことができるでしょう。

カーボンニュートラル燃料の種類は2つ

さて、ここまでカーボンニュートラル燃料の概念や注目される背景、メリット・デメリットについてお話ししてきましたが、実はカーボンニュートラル燃料には気体合成燃料と液体合成燃料の2種類が存在します。

気体合成燃料と液体合成燃料

図 CO2とH2から期待合成燃料と液体合成燃料を作る過程
出典:資源エネルギー庁:エンジン車でも脱炭素?グリーンな液体燃料「合成燃料」とは(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/gosei_nenryo.html)

気体合成燃料はメタン

天然ガスの主成分であるメタンを、CO2とH2から合成する技術をメタネーションといいます。

この合成メタンは、カーボンニュートラル燃料のメリットとしてお伝えしたように既存のインフラをそのまま活用することができるため、日々使われるガスを徐々に合成メタンに切り替えていくことが可能です。

エネルギー基本計画においては、ガス体エネルギーの脱炭素化に向けて合成メタン・水素・バイオガスを利用する目標を設定しており、都市ガス業界も東京ガス・大阪ガスが2030年に合成メタン1%導入を表明しました。

液体合成燃料はメタノールと混合物燃料

メタノールは燃料として使われるアルコールの一種で、CO2からこれを合成する技術をメタノール合成といいます。

また、​​合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス)からガソリンなどの混合化学燃料を合成する触媒反応はFTP合成と呼ばれています。

このFTP合成により、ナフサ・ガソリン、灯油・ジェット燃料、軽油、重油が製造されるというわけです。

さらに、液体合成燃料のメリットとしてエネルギー密度の高さがあげられます。

例えば大型車や航空機など大きくて重いものを動かす場合、エネルギー密度の低い電池や水素エネルギーを用いると大きな容量が必要になります。

エネルギー密度

図 電池、ガス燃料、液体燃料のエネルギー密度

出典:資源エネルギー庁:エンジン車でも脱炭素?グリーンな液体燃料「合成燃料」とは(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/gosei_nenryo.html)

このような乗り物は電気化や水素化が難しく、液体燃料は存在し続けると考えられていますが、このような乗り物の動力エネルギーがカーボンニュートラル燃料に置き換わることでCO2の排出が抑えられます。

カーボンニュートラル燃料の2つの活用方法

カーボンニュートラル燃料の種類がわかったところで、次はカーボンニュートラル燃料がどのように使われているかについて見ていきましょう。

カーボンニュートラル燃料は、大きく分けて以下の2つの活用方法があります。

1.自動車への活用
2.航空機や船舶への活用

それぞれ詳しくお話してまいります。

1.自動車への活用

自動車

燃料と聞いて、多くの方が自動車を思い浮かべるのではないでしょうか。
それほど社会は自動車との共存の上に成り立っているため、まず注目すべきは自動車への活用でしょう。

前項でお話した、カーボンニュートラル実現に向けた「グリーン戦略」において、
2035年までに一般乗用車の新車販売を100%電気自動車にすることが目標とされています。

世界的に電気自動車化の流れが続くなか、エンジン車との共存はまだまだ続いていくことが予想されていて、ガソリン車やハイブリッド車などのエンジン搭載車は2030年時点で91%、2040年時点で84%を占めていると予想されています。

エンジン自動車

図 IEAが示した「技術普及シナリオ」による2050年のガソリン車の残存数

出典:資源エネルギー庁:エンジン車でも脱炭素?グリーンな液体燃料「合成燃料」とは(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/gosei_nenryo.html)

これはカーボンニュートラルを実現する上では自動車産業の大きな課題であるとも言えます。

この課題の背景には、電気自動車やそれに搭載する蓄電池の開発、ガソリンスタンドなどに設置されている電気自動車用の充電器といったインフラ整備の課題がまだまだ残っていることがあげられます。

特に大型トラックなどの商用車は、エネルギー密度の問題から電池で大きな車体を動かすことが現状難しく、ハードルが高いです。

しかし、エンジン車にはカーボンニュートラル燃料である液体合成燃料を利用することができます。

そのため、エネルギー密度の高い液体合成燃料を用いることで、カーボンニュートラルを実現することができると考えられています。

2.航空機や船舶への活用

航空機と船舶

エネルギー密度の高い液体合成燃料の利点は、航空機や船舶へも活用することができます。

この航空機・船舶の分野では、国際機関の要請でCO2の削減目標が定められており、以下のような代替燃料の技術開発が進んでいます。

航空機:バイオジェット燃料・合成燃料
船舶:水素・アンモニア

バイオジェット燃料はすでに商用化されていますが、バイオジェット燃料は原料が枯渇してしまう懸念があります。

その点、液体合成燃料は大量生産できるよう開発が進められており、持続可能な航空燃料としてカーボンニュートラル燃料が期待されています。

これらの2つの活用は、いずれも既存のインフラをそのまま使うことができます。
そのため、新しいインフラの導入コストが大きく下げられるだけでなく、需要減により余剰となる設備を活用することもできます。

【2023年最新】カーボンニュートラル燃料に関する企業の取り組み

カーボンニュートラル実現に向けて、多くの企業や各種団体がカーボンニュートラル燃料の商用化に向けて取り組んでいます。

ENEOS株式会社、スズキ株式会社、株式会社SUBARU、ダイハツ工業株式会社、トヨタ自動車株式会社、豊田通商株式会社といった日本を代表するモビリティ産業企業6社により、次世代グリーンCO2燃料技術研究組合が2022年7月に設立されました。

この組合はカーボンニュートラル社会実現のため、効率的に自動車用バイオエタノール燃料を製造する技術研究を進めることを目的としています。

また、モビリティスポーツの領域において、F1が100%持続可能な燃料を2026年に導入する予定であると明らかにしました。

さらに2022年10月、石油連盟は「カーボンニュートラル燃料の導入・普及に向けた提言」を作成しました。
この提言は、政府と企業が連携してカーボンニュートラル燃料の開発・導入・普及に向けた取り組みを加速させ、それを実現するための政府への要望をまとめたものです。

>>カーボンニュートラル(CN)燃料の導入・普及に向けて(提言)【概要版】

今後も、持続可能なエネルギーとして脱炭素社会への大きな前進につながることが期待されますね。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は、カーボンニュートラル燃料について解説させていただきました。

カーボンニュートラル燃料は、既存のインフラが利用できるなどメリットが大きく、今後製造技術の確立やコストダウンの実現により脱炭素社会への大きな前進につながることが期待されます

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